日時:2019年6月30日(日)午後1時00分~2時45分
会場:私学会館(アルカディア市ヶ谷)11階・伊吹の間
名称:座談会「アニメーションの研究と学問――この20年とこれから」
登壇者:石田美紀(新潟大学)
木村智哉(玉川大学)
米村みゆき(専修大学)
司 会:小出正志(東京造形大学)
趣旨:
昨年7月28日に開催を予定していた「日本アニメーション学会創立20周年記念座談会 アニメーションの研究と学問――この20 年とこれから」の順延開催となる。
都合により登壇者の一部が交代となるが(キム ジュニアン会員→石田美紀会員)、基本的なテーマや内容は昨年の企画を踏襲するものとなる。
以下「日本アニメーション学会創立20周年記念行事座談会+祝賀会」冊子掲載の開催趣旨を転載する。
日本アニメーション学会は1998年7月25日に設立総会を開き、発足した。アニメーションの研究、特に学術研究の歴史がいつまで遡ることができるかは意見の分かれるところであり、例えば1987年のSociety for Animation Studies(国際アニメーション学会)の創立をシンボリックに捉え、1980年代とする立場もあれば、研究者個人の活動を源流とする考え方もあり、当然後者はより古くなる。日本でいえば1975年8月の日本映像学会アニメーション研究会(第一次)か、あるいはより本格的な活動となった1992年1月の第二次研究会発足が一つのメルクマールといえるかも知れない。
なぜこの様なことを述べるかといえば、研究、とりわけ“学術情報の生産”としての学術研究は個人の活動だけでは十分なものとはならないからである。研究は極めて個人的な営みという側面を持つ一方で、それは常に開かれたものでなければならない。研究が開かれる、あるいは研究を開く際に、そこには組織化された研究活動の世界が存在する必要があるだろう。それが学会であり学界である。その意味でアニメーション研究者の組織化や主たる学会活動、換言すれば研究発表の場を設けることなどを標榜して日本アニメーション学会が創設されたことの学問的意味、歴史的意味は大きいといえる。
以来20年、兎にも角にもアニメーションの学術研究の場は確立したように見える。この間、年次研究発表集会である学会大会は1999年の第1回より毎年途切れることなく20回の開催を数え、学術雑誌・論文誌である学会機関誌『アニメーション研究』も1999年の創刊以来、やはり毎年途切れることなく刊行され、通巻は25号を数える。これらのことから少なくとも外形的には確立したとしいうことができるだろう。ではその実質はどのようなものであろうか。形式ではなく内容を問うとき、それが容易ならざるものであることを知ることになる。もちろん量から導き出される質もある。一方で一つひとつの研究活動や研究成果に対して質的評価を行うことの難しさもある。論文誌において査読が行われその結果採否や改稿が行われている以上、研究に対する一定の評価がなされているといえるが、アニメーションの学術研究の様に方法や規範などが確立していない、あるいは未成熟な分野では本質的な困難さがあり、頻繁にそれは顕在化する。これまでの学会大会の研究発表や、機関誌の掲載論文、そもそも大会発表や機関誌編集の運営方法や方針などにおいてすら大きな問題が生ずることも珍しくはない。この座談会では改めて学術研究の0地点からの議論を期待したい。(小出正志)